2016/02/29

行政訴訟

昨年刊行された『難民勝訴判決20選』(信山社)は、ビルマ難民の弁護でも知られる渡邉彰悟弁護士が編集代表のひとりとして関わられた本で、日本の難民関係の裁判のいわばベスト盤だ。

この本には、法務省の難民不認定という行政処分を、司法判断で取り消させた(つまり難民と認めさせた)行政訴訟が20事例含まれており、そのうち多くがビルマ難民のケースとなっている。

ビルマ問題や難民問題に関心のある方はぜひ読んでほしいと思う。

ところでこの間のことだが、品川の入国管理局から電話がかかってきた。留守電に用件が入っていて、掛け直せという。

翌日の午前中に掛け直すとアナウンスが流れる。混んでいて繋がりませんというのだ。これはいつものことだ。ひどい時には1日掛けても繋がらないこともあった。

以前のことだというが、ある難民関係の団体が入管と公的な場で話しあう機会があったのだそうだ。そこで、入管の電話があまりにも繋がらないと非難したら、当時のトップが怒り出した。ということは、痛いところを突かれたということだろうが、その結果、多少は繋がりやすくなったという。だが、そうでもない時もある。

「……そのままお待ちになるか、しばらくしてからお掛けください」

わたしはお待ちになることにして電話のスピーカーをオンにする。どれくらい待つのだろうか。アナウンスのテープが2周目に入った。わたしは机の上においてあった飴の包みを剥き、舐めはじめた。とすぐにアナウンス中断、女性の声。

「はい、東京入国管理局です」

わたしはあわてて飴を口から出し、ティッシュの上に乗せる。

用件は無事終わり、電話を切る。そして、わたしは飴をもう一度口に入れようとした。だが、そこにはティッシュまみれになった無残な飴の姿が……。

電話が繋がらない、そんな入管の対応のまずさ、無責任さがこんな悲劇を引き起こしたのだ。

入管を訴えることができるだろうか? 飴を返せ裁判を起こすことが? 飴の遺影を抱きながら?

司法判断を大いに期待したい。