2013/10/10

おもてなしに倍返し(3)

労働時間の問題についても,Nさんは「こんなことあるわけない」と主張した。

その理由はといえば,彼の周りには同じように仕事を掛け持ちしているビルマ人はいくらでもいるが,2つの仕事の合計労働時間が基準を超えているからと,仕事をやめさせられた話など聞いたことがないからだ。

また,彼はさらに言った。2つの職場で長時間働いていることが問題ならば,もうひとつの職場,つまり深夜の飲食店にも役所が調べに来ていなくてはならない。しかし,その店の人に聞いたところ,そのようなことはなかったという。

わたしは労働の問題についてはよくわからないが,ネットで調べた限りでは,労働基準法はダブルワークのことについてはあまり考慮していないようで,複数の職場でアルバイトする場合の労働時間の制限については特に明確に定められてはいないようだ。

たとえそれが間違いだとしても,どうしてNさんだけが,労働基準局だか,区役所だか分からないが,行政の関心の対象になるのかは不思議なことと言わねばならない。

そんなわけで,Nさんは,入管が来ただの役所が来ただのは,すべてでたらめ,つまりH部長が自分を解雇するために,適当な理由をでっち上げているに過ぎない,と考えた。

そして,彼とその同僚たちの経験によれば,H部長はいかにもそのようなことをしそうな人物であった。