2013/04/02

Crony

ビルマの滞在中、crony(クローニー)という耳慣れない英単語をよく耳にした。一種の流行語のようだ。

調べてみるとcronyというのは「仲間、友人、旧友、取り巻き」を意味し、cronyismとなると「友人びいき、縁故政治」だそうだ。nepotismにも近い。

いずれにせよ、この言葉は、現在のビルマにおいて経済的利権を我がものにしているほんの一握りの人々を指すのに用いられている。それは、軍関係者であったり、政商であったり、新興富裕層であったりするのだが、こうした人々は、特権的な地位を利用して富を集め、国民から大いに搾り取っているのだそうだ。

ビルマ国内で農民の土地がかなり強引なやり方で政府関係者に奪われていることについてはたびたび報告されている。わたしが2月15日にエーヤーワディ管区の農村を訪問したさいには、農民組合の集会がたまたま行われており、奪われた土地を取り戻すためにどうしたらよいかが話し合われていた。

また、この辺りの村の川からは魚がまったく捕れなくなってしまったが、それは上流でこのCronyたちが乱獲したせいだという。

その汚い川辺では3人の子どもが泥だらけになりながら、魚を捕っていた。バケツを見せてもらったが、小さなハゼのような魚が一匹いるだけだった。その哀れな成果が同行者にCronyのことを思い出させたのである(写真はInn Ma村で撮影)。


因果関係はわたしには分からないが、このCronyに対して人々がどのように考えているかは分かる。また、Cronyのせいで貧しい人々がよりいっそう貧しくなっている、という見解を口にする人もいる。

ある市井のカレン人に言わせれば「この国にはもはやミドルクラスがいなくなってしまった」ということで、「ほんの一部のエリート」と貧しい人々の2種がいるだけなのだという。そして、かつてはミドルクラスの生活を維持していた彼はいまや後者に属している。

はっきりしているのは、貧富の格差が拡大しており、人々がそれを鋭く意識し、そして政府はこの状態を放置していると感じていることである。

軍事クーデターによって終わった1988年の民主化運動のきっかけとなったのは、国民の貧困問題であった。現在のビルマ政府が、このまま順調に改革を進めることができるか否かは、いままさに大きくなりつつある貧富の格差をどう解決し、国民全体の生活を向上させて行くかにあるだろう。