2015/05/21

国境の生活 [5日目]

入管という名の地獄から電話を掛けてきた友人は不眠を訴えた。

「せいぜい長くて2時間寝れればいいほうで、2分ごとに目が覚めるんです……。入管の医者から睡眠薬もらってます」

今度「カウンセラー」と称する人物が会いにくることになっているが、彼はこいつが精神病の医者じゃないかと疑っていた。

彼は今回が3度目の収容で、前回仮放免された時も不眠で相当参っていた。釈放されたばかりのころ彼は時たまわたしに電話をかけてきてとりとめもない話をした。なかなか切らせてくれないので、しまいには電話に出るのがいやになった。もっとも、1年ほどすると、落ち着いたまともな人間になった。

この電話からしばらくして再び彼から電話がかかってきた。

「この前、言ってたカウンセラーが来たんです。しんりがくってどういう意味ですか」

「サイコロジーだね」

「何のために来たんですかね」

「不眠だって言うから、たぶん、心のケアか何かのためじゃないかな。それでなんて言ったの」

「眠れないこととか話しましたよ。45分間ぐらいだったかな」

「で、カウンセラーはなんて言ってた?」

「メリハリのある生活をしなさいって言ってました」

これにはわたしも彼も大爆笑だ。

収容生活にメリハリもクソもあるもんか。