2013/10/23

さみしいと いま

この間の日曜日はチン民族のお祭りが品川で開催された。わたしも招待されていたが,海外カレン機構(日本)の会議が駒込であり,残念なことに参加することができなかった。

だが,ひどい雨のせいでその会議の出席者も少なかった。わたしたちは1時間半ほど活動について話し合い,解散した。


そのうちの5人で近くの居酒屋に入った。ビールとハイボールをそれぞれが4杯ほど空けた頃,1人のところに電話がかかってきた。

「居酒屋にいるから来い来い」と言っている。近くに住むカレン人のWさんからだった。会議の後には彼の家に行って,みんなで酒を飲むことも多かった。今夜も彼はそれを期待していたのだが,誰も来ない。それで電話をかけてきたというわけだ。

「さみしくなったんだ」とわたしたちは笑った。

50を越した独り者とあれば仕方がない。やがてWさんがやってきた。さあ,ビールだ,乾杯!

わたしはさらにハイボールを2杯ばかり。するとまた着信。もうひとり別のカレン人が来るという。彼はみんなと飲もうとWさんの家に行ったが誰もいない,で電話をかけてきたのだ。

「さみしくなったんだ」とわたしたちは笑った。

彼は1年ほど前に離婚したばかりなのでもうこりゃ仕方がない。

さみしい者たちが陸続と。しかしそもそもそれ以外にわれわれが居酒屋に行く理由などあるものだろうか?

世の中のあらゆる酒場は,さみしさにはいくら感謝してもし足りないはずだ。


2013/10/19

Tired of Waiting for You

難民認定申請は結果が出るまでにとても時間がかかる。平均2年ともいうが,実際にお目にかかるのはそれ以上かかるケースばかりだ。

というのも,その出た結果というものはたいてい悪い結果,つまり不認定で,その後再申請(あるいは裁判)を余儀なくされるわけで,申請中の決まりのつかない身の上は,2年以上,何年も何年も続くこととなる。

入管の方でも審査の迅速化を図っており,ずいぶん早く結果の出る人もいるが,それも認定数が少なければ,いくらスピードアップしても,あまり効果はない。つまり,結果を待ち焦がれる申請者数はなかなか減らないのだ。

どうして審査に時間がかかるのか,いや,それだけではなく,どうして申請者によってかかる時間がまちまちなのか,それは入管の難民審査の大いなる謎だ。ある申請者は一年のうちに結果が出たというのに,別の人は口頭審査に辿り着くまで何年も待たされる,という不合理はざらにある。

先日あるカレン人難民認定申請者と話をしたが,彼は2009年7月に入管収容所の中で申請を行い,一次審査の結果,2010年6月ごろ不認定となった。そこで,誰もがするように異議申立て(二次審査の申立て)を行ったのであるが,そのインタビューがようやく,ついに,いよいよ,今年の12月に行われるというのだ。

この3年以上の間に,入管が何をしていたのかは分からないし,その遅延は役所の仕組み上やむを得ないことなのかもしれないが,彼の貴重な命がそれだけ蕩尽されたということはいかにも悲しいことだ。

もっとも,人によっては,インタビューを待たされる理由が推測できるケースもある。これは直接聞いた話ではないが,あるビルマ人難民はもうかれこれ7年以上,入管のインタビューを待ち続けているのだそうだ。

その原因はといえば,彼が最初のインタビューの時,難民審査官の態度が悪かったのか,それとも何か別の理由からか知らないが,ひどく激昂して,机をひっくり返したことによるといわれている。

いかなる事情があろうと,暴力に訴えることは愚かなことであり,また入管がこの自制心のない申請者を警戒するのも理解できるが,もし入管がこの音信不通に懲罰的,あるいは見せしめ的な意味合いを含ませているとしたら,それはまったくのお門違いだ。もっとも,本当のところは皆目分からないのだが。

さて,この記事の表題となったのは,この地上で結成されたバンドのうちでもっとも素晴らしいと言われているThe Kinksの,それこそ無数にある名曲のひとつだということを注記しておこう。

2013/10/17

おもてなしに倍返し(6)

そこで入管に電話をかけ担当の方に尋ねてみると,滞在資格変更の件でNさんの勤務先に連絡した事実はないとのこと。

さらに言うには,入管の他の部門が労働時間に関して問い合わせをするとも考えにくいと。

つまり,入管は今回の解雇の件に関係なさそうだということだ(なお付け加えれば,後にNさんは何の問題もなく滞在資格変更が認められた)。

これで,入管がNさんの職場に連絡した(あるいはやってきた)というのはH部長の嘘か,彼の話をNさんが誤解したかのどちらかということになった。

NさんはH部長についてよく思っていないから,絶対に嘘をついたのだと主張する。そして,わたしに電話で話してくれるようにと頼んだ。

わたしとしては,もしかしたら不愉快な思いをしかねない相手に電話するのは気が進まなかった。

しかしNさんにはかなり世話になっている。断るわけにはいかない。で,電話を掛けた。そして,相当の不愉快を感じた。

2013/10/12

カチン・マナウ祭り 東京 2013

Tokyo Manau 2013
カチン・マナウ祭り 東京 2013

《日付》2013年11月8〜9日

《場所》芝公園 第23号地

《プログラム》
11月8日 10:00-17:00 開会式とマナウ・ダンス

11月9日 10:00-17:00
 10:00 マナウ・ダンス
【マナウとは】 ビルマ(ミャンマー)の民族のひとつであるカチン人の伝統的なお祭りです。にぎやかな歌とともに人々が列を作って踊り,民族の平和を祈ります。

 12:00 カチン音楽ショウ
 (ビルマからカチン人の著名な歌手が来日してコンサートを行います)

 15:00 閉会式とマナウ・ダンス

*カチン料理,ビルマ料理のお店も出てお祭りを盛り上げます!

主催:Kachin National Organization (Japan) カチン民族機構(日本)

2013/10/11

おもてなしに倍返し(5)

Nさんはちょうどこの時,入国管理局に滞在資格の変更申請をしていた。これまで1年ごとに更新しなくてはいけなかったのを3年ごとの更新で済むようにしてもらおうとしていたのだ。

この手続きでは,申請書に勤務先や収入を書かなければならない。これはおそらく滞在資格の条件として自立して生活できるだけの収入があるかどうかが重要であるからであろう。

ところで,先に「自分は税金も保険もちゃんと払っているから何の問題もない」というNさんの言葉を記したが,これも滞在資格の変更を念頭に置いたものでもある。しばしば聞くのが,税金が滞っていたため変更できなかったり,入管に納めるように指示されたりしたという話で,だからこそ,Nさんもその辺りのことを気をつけていたのだった。

それはさておき,Nさんが滞在資格変更手続き中であることを聞いていたわたしは,もしかしたら入管がそのからみで勤務先に何か確認の電話でもしたのでは,と考えたのだ。

もしそうだとしたら,そのことにH部長が単に過剰反応しているだけということもありえる。あるいは,Nさんが言うように人間性に問題がある人であるならば,その事実を不当解雇に利用しようとしていることだって考えられる。

いずれにせよ,入管に問い合わせるのが先だ。

おもてなしに倍返し(4)

「この男は本社が事情を知らないのをいいことに,いつもわたしたちに嘘を言って苛めてるんだ。お店の店長もみんな困ってる。今回わたしが辞めさせられたのだって,同じだよ。H部長が自分で勝手にやってるんだ。店長もわたしを首にするのには反対だけど,仕返しが怖いから何も言えないんだ」

なるほど。だが,H部長の評判はわたしには関係ない。重要なのはこの解雇が不当なものであるかだ。

わたしがネットで調べた知識によれば,不当解雇とは少なくとも次の2つの条件に当てはまるもののようだ。

1)30日以上前にすべき解雇予告をしていない。
2)解雇の理由が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」

まずはじめのものについていえば,今回のケースはこれに当てはまる。というのも,解雇を通知されたのが,前日なのだから。

では,2番目の理由についてはどうか。

NさんはわたしにH部長に電話して解雇理由について確かめてほしいと頼んだ。だが,わたしはその前に電話しなくてならない場所があることに気がついた。

2013/10/10

おもてなしに倍返し(3)

労働時間の問題についても,Nさんは「こんなことあるわけない」と主張した。

その理由はといえば,彼の周りには同じように仕事を掛け持ちしているビルマ人はいくらでもいるが,2つの仕事の合計労働時間が基準を超えているからと,仕事をやめさせられた話など聞いたことがないからだ。

また,彼はさらに言った。2つの職場で長時間働いていることが問題ならば,もうひとつの職場,つまり深夜の飲食店にも役所が調べに来ていなくてはならない。しかし,その店の人に聞いたところ,そのようなことはなかったという。

わたしは労働の問題についてはよくわからないが,ネットで調べた限りでは,労働基準法はダブルワークのことについてはあまり考慮していないようで,複数の職場でアルバイトする場合の労働時間の制限については特に明確に定められてはいないようだ。

たとえそれが間違いだとしても,どうしてNさんだけが,労働基準局だか,区役所だか分からないが,行政の関心の対象になるのかは不思議なことと言わねばならない。

そんなわけで,Nさんは,入管が来ただの役所が来ただのは,すべてでたらめ,つまりH部長が自分を解雇するために,適当な理由をでっち上げているに過ぎない,と考えた。

そして,彼とその同僚たちの経験によれば,H部長はいかにもそのようなことをしそうな人物であった。