2015/06/03

ネガティブでクールな地獄 [15日目]

仮放免申請のために次に面会したのは不眠症に悩むBRSA会員だ。

いやな雰囲気をまとって面会室にやって来る。笑顔ひとつ見せない。

眠れなくて追いつめられているのだ。収容される前は、控えめだけど人を脅かすような感じのある人ではなかった。いまではすっかりネガティブの吹きだまりだ。

国境ではポジとネガが入れ替わる。

それはともかくわたしと話していると少し笑顔を見せる。暗い世界に光が差したという感じだ。

眠りが浅くてせいぜい2時間ぐらい。朝の点呼の後も横になっているが、テレビや人の出入りがあるため寝つけない。イライラが募るので精神安定剤をもらっている……。

そんな様子を聞きながら、仮放免の申請書に署名をしてもらう。面会後に受け取ることになっている。

面会時間は30分だが、わたしは2人に面会するので15分ずつに短縮してもらっていた。

イライラについて話している時、入管の職員が迎えに来た。

彼は無視している。話し続ける。再び強烈な敵意を発散しはじめる。

「自分がこんなに怒りっぽくなるなんて思いもしませんでした……」

わたしは彼が入管の職員に敵対的な行動を取るのではないかと恐れ、ノートを畳んで立ち上がる。彼もやがて席を立つ。ネガティブ界の天使は彼を奪い去っていく。

2人の仮放免申請を無事に済ませ、入管で用を済ませた人々でいっぱいのバスに乗り込む。品川駅でみな降りる。若い外国人男性が前にいる。リュックにアニメのキャラクターの缶バッジをいくつもつけている。猫の耳の女の子やなんかだ。

日本ではそういうものを公共の場で身に付けたりすることは重罪にあたり、場合によって「クール・ジャパン」と呼ばれる極寒の監獄に送られることがあるからすぐに捨てたほうがいい、と教えてあげたがったが止めた。

くそっ、他人のことなど構っていられるか。