「もちろん強制するわけではないのですが、政治活動はしっかりやった方がいいですよ」とぼくは、あるビルマ人難民認定申請者に語る。
「ええ、それは分かっているのですが、どうも引き籠もりがちで」
「少しの間ですよ。ビザが貰えるまでの間、一生懸命デモに参加したり、集会に参加したりすればいいのです。何も一生続けろというわけじゃないんです。もし、デモだのなんだのが性に合わなければ、雑誌に記事を書いたり、インターネットで自分の意見を発表してもいい。要するに、自分のやりたいように政治活動をするのが一番なんです。とにかく、保証人であるぼくとしてはあなたに早くビザを取って欲しいんです」
「ええ、ええ」と肯きながら、彼は仮放免期間延長届をカバンから取り出し、ぼくの前に差し出す。彼は、身元保証人であるぼくの署名の入ったこの紙を持って、3ヶ月ごとに入管に出頭しなければならない。
「最近、入管もちょっと厳しくなっているようです。ことによったらもう一度収容だなんてこともあるかもしれません。そうなってからでは遅い。収容される前にたくさん活動して、しっかり準備しておかなくてはなりません。収容されては何もできませんからね。ところで、入管に行くのはいつです?」
ぼくの署名の入った紙をカバンにしまいながら彼は答える。「明日です」
「そうですか。政治活動のことだったらいつでも相談に乗りますよ。じゃあ、また何かあったら連絡下さい」
翌日、彼からの留守電。「もしもし、わたしは今入管の中にいます!」