2011/05/17

ぱすぽ☆

震災以後、難民認定申請を止めて帰国するビルマの人がいる。

そうした人は二つの手続きを行わなくてはならない。一つは入管に行って、難民認定申請を放棄することであり、もうひとつはビルマ大使館に行ってパスポートを発行してもらうことである。

この間、帰国するというビルマの人に、発行したてのパスポートを見せてもらった。

20ページほどの、鶯色の紙をとじ合わせた簡易ななものだ。

もっとも、パスポートというのは正確ではない。正式には身分証明書で、「パスポートの代わりに使用できる」と記されている。また、すでに発行したパスポートが有効期限切れなので、その代用である、ともある。8ページ目には次のような英文がハンコで押されている。

Good for return to the Union of Myanmar only. This Certificate of Identity must be surrendered to the Immigration Authorities on the bearer's return to the Union of Myanmar.

つまり、このパスポートは帰国のためだけのもの、そして、帰国したら空港で取り上げられる、ということだ。

聞いた話では、このパスポートを取得するのにビルマ大使館に9万円払わなくてはならないのだそうだ。わたしにパスポートを見せてくれた人は、10万円払ったといっていた。

いついかなるときでも足元を見るのを忘れるな、というのがこの政府のモットーなのだ。

2011/05/16

難民キャンプ閉鎖(3)

タイ政府がおよそ実行不可能な難民キャンプ閉鎖を言い出した背景は、隣国ビルマ政府との関係に配慮してとりあえずポーズを取ってみた、というのがもっともありそうな解釈だ。

それはまず、中国と同じくタイにとってもビルマの労働力と資源はその経済発展にとって不可欠だからである。また、カンボジア国境で紛争を、タイの南部でテロの問題を抱えるタイにとって、ビルマとの国境の安定は非常に重要なことにちがいない。少なくともタイ政府にとってビルマ政府と険悪になってよいことは何一つない。

しかし、ならば本当に難民キャンプを閉鎖してしまえばよいではないか、と考える人もいるかもしれないが、それは非常に難しい。すでに述べたように実質的に不可能であるというのがその理由だが、これ以外にも次のような理由があると思う(もっともわたしはタイ国内の政治状況についてはほとんど知らないので、これまで見聞きした情報から推測するにすぎない)。

1)難民キャンプの閉鎖による国際的非難。

2)難民キャンプを閉鎖することによる現地の経済的損失。
多数の国際支援NGOがやってきて地元に雇用を与え、現金を落としていくことから、しばしば「難民キャンプはビジネス」だと言われる。タイの中央政府にとってはともかくとしても、地元ではこれをいろいろな意味で利用している人もいるのである。

3)タイのカレン人の反発。
難民キャンプがある地域は、タイのカレン人が住む地域でもあり、タイのカレン人の政治家もいる。難民カレン人やその政治団体やNGOの働きにはこうしたタイ側のカレン人のバックアップがある。カレン人難民の対処を誤るとタイ国内の民族問題にも発展しかねないのである。

難民キャンプ閉鎖(2)

そもそも、難民キャンプにいる人々はほんの氷山の一角なのだ。まず、カレン州には何万もの国内避難民がいる。これらの人々は難民キャンプに行きたくないか、行き着けないかのどちらかの人々で、ジャングルの中を逃げ回っている。

また、タイ国内にも、ビルマの人々が相当な数、移住労働者として住み着いている。これらの人々のほとんどは、必要がないから自分を難民として主張しないだ けの人々だ。いやそもそもタイは難民条約に加盟していないので、UNHCRを通じて難民キャンプに入らない限り、難民と認められることはない。だから、難民だが難民キャンプに入りたくない人はタイ国内では移住労働者となるしかないのだ(少なくともはじめの段階では)。

難民キャンプの人々が、強制送還以後、あるいはキャンプからの逃走以後、ふたたびタイに舞い戻って(これはとっても簡単)、これらの移住労働者グループに吸収されるのは間違いない。

そもそも、ビルマ国籍者の移住労働者の増加は、タイ政府にとってデリケートな問題だ。タイ政府がわざわざ移住労働者を増やすような決定をするはずがない。

そしてまた、難民キャンプの閉鎖は「難民キャンプの外には難民はいない」というタイ政府の建前すら崩しかねない。もちろん、タイ政府が難民条約に加わるならば話は別だ。だが、そうしたら、タイ国内は何万もの難民認定申請者で溢れかえることだろう。噂を聞きつけた国内避難民だって大挙してやってくる。今度は難民キャンプがあるからではない。せまっ苦しい難民キャンプが無くなったと聞いて、喜び勇んでやってくる。正々堂々と、難民認定申請書を片手に。

要するに、タイ政府の難民キャンプ閉鎖はまったく現実的ではないのだ。

では、なぜタイ政府はそんなことを言い出したのか?

2011/05/03

難民キャンプ閉鎖(1)


ビルマでの新政府の発足を受けて、タイ政府が難民キャンプの閉鎖を検討しはじめたというニュースが先日流れた。「難民キャンプ閉鎖」 タイの送還方針、波紋

これを聞いていろいろ懸念する人がいるが、これはまず不可能だと思う。

9箇所の難民キャンプに暮らす15万人もの人々をいったいどうやって帰すのか?

もちろん、難民キャンプはたいていビルマ国境の目と鼻の先にあるにしても、これだけの人々を意に反してそのわずかな距離を動かすことは容易ではない。ビルマ側で大規模な野外フェスでもあれば、例えジャングルの中でもほっといたって何万人もの人々が歩いて行くだろうが、そんな呑気なお国柄ではない。

タイ軍がムリヤリ大量に送還すればいい? やめといたがいい、そんなこと。ますます厄介疑いなし。難民たちが大人しくされるがままになることなどありえない。必死の抵抗だ。みんなビルマでなぶり殺しにされるよりましだと思っているからね。死者が出ずにはいない。そうなりゃもちろんタイの国際的な評価だって下がる。

では、少しずつ送還したらどうか。これもまず不可能。一人でも送還したら最後、すべての難民たちはキャンプの外へと逃げ出すだろう。もちろん、タイには検問があちこちにあるので捕まえることは不可能ではないが、それでも15万人をすべて捕まえて送還する手間は膨大だ。

2011/04/30

大量強制送還(2)

というのも、最初の1人を捕まえて、収容後に送還したら最後、残りの2999人は蜘蛛の子を散らすように逃げてしまうから。

これらの人々は、難民認定申請のため、あるいはビザの延長のため、定期的に入管に行かなくてはならないのだが、自分が捕まって送還されるとわかっていて、誰がのこのこ入管に足を運ぶであろうか。

つまり、一度強制送還が始まるや否や生じるのは、残りの3000人近い難民たちの「地下への潜伏」であり「不法滞在化」なのである。

と ころで、入国管理局の仕事のひとつは、外国人居住者を管理することだ。外国人を管理不能にさせるような事態こそ、入管がもっともしてはならないことであ り、怖れていることでもある。そのような事態を起こしうる決定、つまり、不法滞在者を一気に増やしかねない決定をみすみす入管がするとは考えにくいのであ る。

さらに、そのようなリスクの高い決定を公務員は普通したがらない、ということも考慮に入れるべきであろう。たとえ、決定自体は大臣の名でするにしても。

こ れに加えて、国内の、また国外からの非難と抗議も覚悟しなくてはならない。在日ビルマ難民、国内の難民支援団体はもちろんのこと、国際的な諸機関、国連や 人権団体もまず黙ってはいないだろう。また、ビルマ難民たちは、ビルマ政府ではなく日本政府に対して抗議デモを行うにちがいない。

こうした抗議そのものに効果があるかどうかはわからないが、少なくとも、入国管理局にとっては有り難くない事態だ。というのも、何事も、できるだけ目立たず、騒がれずにことを進めたがるのが、役所というものだから。

とすると、できるだけ多くの外国人を送り返したい入管にとってこの大量強制送還プランがいかに願ったり叶ったりだとしても、それが引き起こす面倒、注目、非難を考えれば、とうてい見合う方法とはいえない。

そこで結局残るのは、入管のいつものやり方、つまり一人一人に対してこつこつと「帰りなさい」と言い続けることだ。そして、このやり方に対しては、ビルマ難民たちはもう何年も上手くやり過ごしてきたのである。

2011/04/27

大量強制送還(1)

2010年には総選挙があり、スーチーさんも釈放された。それで今年の4月には「民主化」政府が晴れて新装開店の運びとなったわけだが、こうした流れを受けて、多くのビルマ難民、特に難民認定申請中の人と、難民申請の後に難民とは認められなかったが在留特別許可を得た人の間で、ある心配が広がっている。つまり、民主的になったのだから帰れ、と入管が方針転換して、ビルマに全員送り返されるのではないか、というのだ。

これらの人々が持つ入管への不信感からすればそのような怖れを抱くのも当然といえるが、少なくともこれに関してはわたし自身はその可能性は低い、と考えている。

とはいっても、わたしになにか特別な情報源があるわけでもない。ある人によれば、入国管理局のトップが「そんなことはありえない」と、大量強制送還を否定したらしいが、そうした情報がなくても、理屈で考えれば、そんなことは不可能だということがわかる。

現在難民認定申請中か、在留特別許可をもらったビルマ難民が何人いるかは正確にはわからないが、難民として認定された人をはるかに凌ぐ数であることは間違いなく、仮に3000人としておこう。

とすると、まずこれらの人々を一度に送還するのは不可能だ、ということがわかる。タイタニック号の二倍以上の特別仕立ての大客船でも用意しなければ無理だ。

いやそもそも、3000人の難民を一網打尽に捕まえて、同時に収容すること自体が不可能だ。

では、少しずつ、捕まえて送還していったらどうか。なるほどこれはいい案だ。しかも、普段の入管のやり方でもある。だが、即座にこれも無理だとわかる。

2011/04/25

一時旅行許可

仮放免中の難民認定申請者は、旅行などで自分の居住地から外に出る場合は「一時旅行許可願」というものに行き先や目的、期間を記し、さらに身元保証人に署名してもらった上、入国管理局に出向いて提出して許可をもらわなければならない。

たとえば、都内に住んでいる人が神奈川県や千葉県に行く場合に必要となるのである(なお行き先は漠然と「〜県」ではダメで、「市」まで記さなくてはならない)。

被災地のボランティア活動を目的としてこの許可願いを申請すると、許可される人とされない人があるということで、在日ビルマ社会では問題になっているという話。

【追記】
後に入管の人から聞いたところによると、期間、宿泊先、内容などを記したボランティア計画書があれば許可されるとのこと。(2011/4/27)